和泉式部

小倉百人一首 056

あらざらむ この世のほかの 思ひ出に いまひとたびの 逢ふこともがな

あらざらむ このよのほかの おもひでに いまひとたびの あふこともがな

和泉式部

読み

あらざらむ このよのほかの おもひでに いまひとたびの あふこともがな

現代意訳

私はもうすぐ死んでしまうことでしょうが、私のあの世への思い出になるように、せめてもう一度なりともあなたにお会いしたいのです。

※あらざらむ / 「ある」に打消しの「ざる」がついていて、「生きていない」の意味。(「ある」は「生きている」、「いる」などの意)
※逢ふこともがな / 「もがな」は願望を表す言葉

季節

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出典

「後拾遺集」

解説
和泉式部 (いずみしきぶ・生没年不明) は越前守 大江雅致(おおえのまさむね)の娘で、母は昌子内親王に仕えた介内侍です。
和泉守 橘道貞と結婚した後、和泉式部と呼ばれるようになり、当時の女流歌人である、紫式部赤染衛門伊勢大輔、 馬内侍らと共に、和歌に優れた五歌仙の一人にあげられています。

和泉式部は敦道親王との恋をつづった「和泉式部日記」で有名ですが、この和歌もせつない恋心を見事に詠っています。
病床で詠んだ歌と言われていて、緊張感がありますが、特別の技巧も見られず、素直な心情が伝わってきます。

第二句のほかは母音ではじまっていることもあり、歌の響きはなだらかで、美しく詠み上げられています。

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