前大僧正行尊

小倉百人一首 066

もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし

もろともに あはれとおもへ やまざくら はなよりほかに しるひともなし

前大僧正行尊

読み

もろともに あはれとおもへ やまざくら はなよりほかに しるひともなし

現代意訳


私がおまえを愛しむように、おまえも私を愛しいと 思ってくれよ、山桜。 (こんな山奥では) おまえの他には私を知る人は誰もいないのだから。

※もろともに / ともどもに
※あはれと思へ / 「あはれ」は同情や愛情、詠嘆などを表す感動詞

季節



出典

「金葉集」

解説
前大僧正行尊 (さきのだいそうじょうぎょうそん・天喜3年~保延元年 / 1055~1135年) は参議・源基平の三男で、治暦三年(1066年)・十二才のときに三井寺(園城寺)で出家しています。
諸国を旅して、歌僧としても名を知られ、白河、鳥羽、崇徳の三天皇からも信頼を得ていたほか、西行法師にも影響を与えたと伝えられています。

この和歌は、行尊が大峰山(奈良県吉野地方)で修行していた時に詠まれたものだと伝えられていますが、孤独な修行の日々のなか、人知れずとも咲き誇る山桜に、思わず呼びかけずにはいられない行尊の気持ちがよく伝わってきます。

大峰山は修験道の霊山として知られている山ですが、厳しい修行の日々を詠むのではなく、ひと時の安らぎを感じさせる情景を詠んでいるところにも味わいがあります。

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