前中納言匡房

小倉百人一首 073

高砂の 尾上の桜 咲きにけり 外山の霞 立たずもあらなむ

たかさごの をのへのさくら さきにけり とやまのかすみ たたずもあらなむ

前中納言匡房

読み

たかさごの をのへのさくら さきにけり とやまのかすみ たたずもあらなむ

現代意訳

かなたにある高い山の峰にも桜の花が咲いたようだから、(その桜を見たいので) 手前の山の霞よ、どうか立たないようにしてくれないか。

※高砂 / 高い山
※尾上 / 山の頂
※外山 / 「深山」に対比させる言葉で、里に近い山

季節



出典

「後拾遺集」

解説
前中納言匡房(さきのちゅうなごんまさふさ・長久2年~天永2年 / 1041~1111年)は大江匡房のことで、赤染衛門の曾孫にあたります。
八才で史記、漢書を読み、詩をつくったと言われ、幼い頃より神童と呼ばれていました。
東宮学士に三度も選ばれるなど学問に優れ、正二位権中納言になっています。

また、八幡太郎と呼ばれる武家の棟梁・源義家の兵法の師でもあり、「野に兵が隠れていると、飛んでいる雁が列を乱す」と教えたことは、よく知られています。

この和歌は、内大臣 藤原師通(ふじわらのもろのぶ)の屋敷で花見の宴が開かれた時に詠まれたと言われています。

この歌では、遠い山から近くの山までの広がりが見えてくるようです。
桜を直接は愛でずに、それを隠そうとする霞に呼びかけることによって、桜への愛情が伝わってきます。

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