俊恵法師

小倉百人一首 085

よもすがら 物思ふころは 明けやらぬ 閨のひまさへ つれなかりけり

よもすがら ものおもふころは あけやらで ねやのひまさへ つれなかりけり

俊恵法師

読み

よもすがら ものおもふころは あけやらで ねやのひまさへ つれなかりけり

現代意訳


一晩中恋しい人を思って悩んでいるので、早く夜が明けたらよいと思っているのですが、なかなか夜は明けず、寝室の隙間さえも、わたしにつれなく感じられます。

※よもすがら / 夜を通して
※閨のひまさへ / 「閨」は「寝室」、「ひま」は「隙間」

季節

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出典

「千載集」

解説
俊恵法師(しゅんえほうし・永久元年~没年不明 / 1113~?年)は源俊頼の次男で、東大寺の僧であったと伝えられています。
後には白河に歌林苑という住居を設け、歌会などを催したと伝えられています。
また、俊恵法師は藤原実定俊成清輔などの歌人とも親しく付き合い、「方丈記」の作者、鴨長明の師としても知られています。

この和歌は恋の和歌のひとつですが、御所の歌合せに出席する友達のために俊恵法師がつくったと言われています。
恋に悩む夜の長さを、寝室の隙間の暗さに見出していますが、その表現(つれなさ)が見事です。
月や夜空を取り上げるのではなく、いつまで経っても陽が射し込まない隙間に目をやることによって、寂しい寝室の様子がよく伝わってくる和歌になっています。

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